Staff Interview

目指そう、世界最速を。

A.S.(商品開発)

東京貿易テクノシステム株式会社

スタイリング領域 商品開発チーム
チームリーダー
2012年入社 / 情報理工学部・情報メディア工学科 卒

2020年、日本のクレイモデル加工機の関係者の間に衝撃が走りました。クレイモデル加工機とは、自動車メーカーが新しい車をデザインする際に、粘土(クレイ)で模型(モデル)をつくる工程で使用される、クレイモデルを削り出すための装置です。それまで国内市場においては当社がほぼ独占状態で、競合が存在しない状況が続いていました。しかし、その年、ある完成車メーカーのデザインルームに海外の競合他社のクレイモデル加工機が導入されたのです。当社には声すら掛からなかった…。入社以来、設計や技術営業、商品開発と、職種を変えつつもずっとクレイモデル加工機に携わってきた私は、愕然としました。競合のクレイモデル加工機の加工速度は、40m/min(メートル毎分)。当時の世界最速であり、当社の製品が25m/minでしたので、実に1.5倍の速度でした。装置の選定には削り出しの精度やユーザビリティなど他にも様々な要素がありますが、速度は非常に重要なファクター。競合他社を超える必要がありました。「同じ速度を狙ってもつまらない。競合の速度が1.5倍なら、そのさらに1.5倍。60m/minを目指そう!」そんなふうにプロジェクトメンバーを鼓舞して、新商品の開発を始めました。

いつも、大切にしているのは、楽しむこと。どんな困難にぶつかっても「わくわくしてきたね!楽しくなってきたね!」と周囲に声をかけ、笑顔で臨むのが私のモットー。今回のプロジェクトもいつもと変わらず、同じスタンスで取り組みました。これまでと別次元の速度を求めるならば、仕組みも全く異なるものを考えなければいけない。そんな中で着目したのは、リニアです。従来は動力をモーターとギアで構成していたのですが、それをリニアモーターに置き換え、高速化を追求。設計から始まり、生産フェーズでも非常に苦労をしましたね。すべて初めての試みですから。強力な磁石を使うため、工具がくっついたり、スマホや時計も壊れてしまう。周囲の鉄粉が付着しないように清掃ルールも改めました。そんな苦心の末、2024年、試作一号機が完成。11月のプライベートショーでは目標の60m/minを記録し、世界最速をマーク。訪れたお客様からも驚きの声が上がりました。この装置を使えば、カーデザインの速度をさらに向上させることができる。それがデザインの幅につながり、たくさんの人のカーライフの豊かさにつながっていく。そこに貢献できることが嬉しいですね。これまでもカーデザインの世界ではモノづくりのプロセスをがらっと変えてしまうような装置がいくつもありましたが、今後も世界最速、世界初に挑戦したい。エポックメーキングなプロダクトを世に送り出せたらと思います。