「モノ売りからコト売りに、シフトしよう。」それは2017年、ティービーアイ(TBE)社内で経営陣から現場に降りてきたミッションだった。AIやIoT技術などを駆使し、これまでメイン商材としてきた監視カメラから、お客様の課題を解決するソリューション提案ビジネスへと幅を広げていく。そんな過渡期にあるTBEを牽引する3名の社員がいた。
H.M.
執行役員・クリエイティブ営業本部 本部長
イメージソリューションセグメント戦略企画部 部長
2018年入社 / 工学部・機械システム工学科 卒
エンジニアとして重工業系や大手電機メーカーに勤務し、主に海外案件に携わってきたが国内ビジネスへの貢献を考え、TBEに転職。現在は新規事業の営業取りまとめ・セグメントの戦略企画を務める。
N.T.
執行役員(フェロー)
技術本部 AI開発室室長
2020年入社 / 理工学部・電気工学科 卒
大学時代から画像処理系のAIを研究し、博士号を取得。大手電機メーカーでAIエンジニアとしてキャリアを積みあげてきた。自分の技術が社会貢献につながっているという実感を求め、TBEに入社。現在はティービーアイの執行役員・フェローを務める。
M.M.
営業企画推進本部 情報企画室 室長
AIソリューション担当部長
2011年入社 / 国際社会学部・国際社会学科 卒
TBEは2社目。システムエンジニアの経歴を持ち、TBEに入社。その後、支店長としての経験を積み、営業企画推進本部で営業企画も経験。現在は営業企画推進本部 情報企画室 室長とAIソリューション担当部長を務める。
1995年の設立以来、TBEが主力としてきたのは、監視カメラシステムビジネス。主に防犯目的で利用される監視カメラのシステム開発・設計・設置・保守サービスまでをトータルに、ワンストップで提供するメーカー商社として成長を続けてきた。結果としてTBEは、監視カメラ市場のリーディングカンパニーの一角に成長。さらに、防犯関連や医療・介護施設のスタッフ用のインカム事業も軌道に乗せた。そんな同社がイメージソリューションセグメントの1社としてさらなる事業進展を企図し、掲げたのが「少子高齢化に伴うDX化をビジネスターゲットとしてAIテクノロジーを主軸とし、クラウド化を推進。IoT化で最適化を実装し、蓄えられたデータをクライアントビジネスへ活かしていく」というミッション。AIテクノロジーだけでなく、アクセスコントロール、インターホンや警備ロボットなど様々なソリューションを組み合わせ、TBE独自のプラットフォームを創造し、データサイエンスを駆使してクライアントの多彩な要望を叶えていく。このミッションを成し遂げるべく、TBEは全社の力を結集。この取り組みは「データサイエンスPjt.」と呼称され、現在も進行中だ。このプロジェクト動向のインタビューに応えてくれたのが、営業企画推進本部でAIソリューション担当部長を務めるM.M.、技術本部 AI開発室室長のN.T.、そして営業本部長と技術部長を兼務するH.M.である。
データサイエンスプロジェクトはAIの活用から始まったと語るのは、M.M.だ。「これまで監視カメラを設置していた企業から、AI技術を用いて、監視カメラで登録済みの人物を顔認証したり、車のナンバーを識別して関係車両だけを施設内に入れたいといったニーズをいただくことがありました。」データサイエンス事業に乗り出す企業は多数あるが、失敗する企業も多い。その大半は技術先行であり、クライアントニーズと乖離していることがほとんどだ。現在は営業企画推進本部で、ソリューションビジネスの提案方法を全国の営業担当にレクチャーする立場にあるM.M.も、もともとは営業担当。M.M.の下には現場の営業を通して、クライアントの声が集まってくる。この“生の声”こそが、TBEが新規ビジネスを創る大切な下地となっている。「AIを駆使すれば、いわゆるビジネスインテリジェンス、ビジネスに寄与する様々なソリューションを創造できます。例えば、カメラに映ったお客様のデータを解析して年齢・性別を把握したり、車のナンバープレートから店舗を訪れたお客様の居住地域を収集できたりと、マーケティング要素での活用が注目を集めている。これまで商品を購入されたお客様にアンケートを記入いただいてようやく収集できたデータが自動で記録・分析できるのです。アンケートだと、購入していない方の情報までは収集できませんしね。」
これら、ビジネスインテリジェンス用途のソリューションは種々様々に生まれているが、その根幹となるAIの研究開発を手掛けるのは、技術本部のAI開発室室長・N.T.である。「TBEはAIをゼロから開発しているわけではありません。海外のAIのソフトウェアメーカーを選定してその技術を購入し、TBE社内で国内のニーズに合うようにカスタマイズしたり、付加価値をつけて販売する。足りない部分はメーカーに対して機能追加や精度改善を依頼することもあります。このあたりがまさに“メーカー商社”の強みが活きる部分です。」そんな研究開発業務においてAIエンジニアとしての難しさを尋ねると、AIは万能ではなく、またクライアントのオーダーも多様であるとN.T.は言う。「たとえば『精度の高いAIがほしい』と言っても、精度の高さはお客様やケースによって違います。誤検知があったとしても極力ターゲットを発見する。その発見率を精度の高さとする場合もあれば、誤検知の少なさを精度のメジャーとすることもある。お客様に合わせてAIをどうデザインするかが変わってきます。また、カメラやインカムなどが設置される環境によっても異なるので、個別にチューニングが必要になります。」一つの現場に最適化しすぎると、他の現場では使えなくなってしまうため、クライアントと十分に相談しつつ、仕様を決定していく。同じソリューションでも毎回異なる対応が求められる面白さ・奥深さがある。またソリューション導入によって、クライアントのビジネスに新しい可能性が生まれる瞬間が喜びだと、N.T.は語る。
営業本部長と戦略企画部部長を兼務するH.M.は、営業・技術の両方の視点から考え、ビジネスを構築していくポジションにある。TBEはカメラやインカム、警備ロボットやオフィスビルや居住施設の入室管理システムなど、様々なソリューションを組み合わせて、独自の認証プラットフォームを形成しようとしているが、国内外のメーカーを調査し、“仕入れ”を行うのもH.M.の仕事だ。「私たちが目指すのは、単に良いプロダクトを持つメーカーと組むことではありません。ソフトやハードを組み合わせ、最終的にTBEの認証プラットフォームとして統合し、社会に広くデータサイエンスを提供できるソリューションを創る。それがTBEの理念であり、進むべき方向です。この理念を実現するために、N.T.さんと共にワシントンに赴いたり、フランスとオンライン会議を重ねたりと、ワールドワイドにパートナーを探してきました。営業面でも、大型案件や高難度案件を成約し、一つひとつ事例をつくり、販売代理店が進んで提案したいというレベルまで引き上げてきました。新商材の拡販体制づくりにも苦心を重ねています。」
現在、AIを駆使した新しいソリューションは引き合いも多く、それに合わせてTBEの主力事業であるセキュリティ分野以外の売上も急成長を遂げている。またAIを絡めることでクライアントの課題解決につなげ、監視カメラの売上増という副次的な効果も得られている。そして、こうした積み重ねの先にあるのが、TBEのゴール。それが、データサイエンスを活用した社会づくり・社会課題解決だ。たとえば、ショッピングモールを訪れる顧客情報をもとに、曜日や天気による傾向を割り出し、必要なスタッフの人数を算出し、動的な提供を可能する。今日はどの施設が混んでいて、どの施設が空いているかをアナウンスし、快適なショッピングを楽しめるようにする…。自社で独自に開発したプラットフォームでデータを収集し、そのデータを利活用することで少子高齢化に伴うDX化に貢献する。現場で働く人も含め、たくさんの人を、社会を幸せにしたい。その無限の可能性を追い続けたい。そんな想いを抱いて、イメージソリューションセグメントのビジョンを目指し、この日進月歩のテクノロジーの世界を突き進むTBE。目指す未来は、きっとすぐそこまで来ている。